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物理の概念

ドップラー効果の公式:符号の選び方と音の計算例

2026年10月23日読了まで2分
ドップラー効果の公式:符号の選び方と音の計算例

クラクションは一定の周波数で鳴っています。車が近づくと音は高く聞こえ、通り過ぎると低く聞こえます。音源がクラクションの音を調整したわけではありません。動きによって、波面が耳に届く頻度が変わったのです。ドップラー効果の公式を使えばその変化を計算できますが、「上はプラス、下はマイナス」とだけ覚えると、2つの符号を取り違えやすくなります。

ここでは静止した空気中を伝わる音を扱い、音源と聞き手が両者を結ぶ直線上を動くものとします。まず表で符号の選び方を整理します。次に、同じ音を使い、音源だけを動かす場合と聞き手だけを同じ速さで動かす場合を計算します。最後に両方が動く場合も考えます。音には媒質があるため、最初の2例は似ていても、計算上まったく同じにはなりません。

まず音源、聞き手、媒質を区別する

音源が出す振動数を fsf_s、聞き手が受け取る振動数を fof_o とします。vv は空気に対する音速、vsv_s は空気に対する音源の速さ、vov_o は空気に対する聞き手の速さです。3つの速さは同じ単位、通常はメートル毎秒で表してください。以下では問題の条件として v=340 m/sv=340\ \mathrm{m/s} を使います。あらゆる空気の状態に当てはまる一定の音速という意味ではありません。

音源と聞き手の違いには物理的な意味があります。音源が動くと、次の波の山は新しい位置から出ます。進行方向の前方では山と山の間隔が狭まり、空気中の波長が短くなります。一方、聞き手が動いても波長は変わりません。聞き手が既存の波の山を横切る頻度が変わります。OpenStaxによる両方の場合の導出も、この2点から始まります。

数値を代入する前に、音源から聞き手へ矢印を1本描いてください。両者がその矢印に沿ってどちらへ動くかを示します。車が視界を横切って動く場合、その速さを丸ごとこの一次元の式に入れることはできません。斜めの経路では、その瞬間の視線方向の速度成分を使います。入門問題では、履修課程で指定された幾何と符号の取り決めに従ってください。

音の公式と符号を選ぶ表

静止した空気中で、同一直線上を動く場合の式は次のとおりです。

fo=fsv±vov∓vs.f_o=f_s\frac{v\pm v_o}{v\mp v_s}.

対になった記号は略記であり、上下の最初の符号を一緒に選べという意味ではありません。分子は聞き手の動き、分母は音源の動きから、それぞれ独立して決めます。

音の進む方向に沿った動き式に入れる形fof_o が上がる、または下がる理由
聞き手が音源に近づく分子に v+vov+v_o毎秒出会う波の山が増え、振動数が上がる
聞き手が音源から遠ざかる分子に v−vov-v_o出会う波の山が減り、振動数が下がる
音源が聞き手に近づく分母に v−vsv-v_s前方の山の間隔が狭まり、分母が小さくなるので振動数が上がる
音源が聞き手から遠ざかる分母に v+vsv+v_s後方の山の間隔が広がり、分母が大きくなるので振動数が下がる

静止している物体の速さはゼロにします。両方が近づくなら、両方の選択が結果を大きくします。fo=fs(v+vo)/(v−vs)f_o=f_s(v+v_o)/(v-v_s) です。両方が遠ざかるなら、両方が結果を小さくします。fo=fs(v−vo)/(v+vs)f_o=f_s(v-v_o)/(v+v_s) です。物体が聞き手の位置を通り過ぎると向きが変わることがあるため、通過後まで接近時の符号を使わないでください。

極限を使った簡単な確認で、重大な符号ミスを見つけられます。vs=vo=0v_s=v_o=0 とすると、必ず fo=fsf_o=f_s になります。近づく場合は発振周波数より高く、遠ざかる場合はより低くなるはずです。どちらかに反したら、計算し直す前に図を見直しましょう。動きが遅ければ周波数の変化は小さめです。10倍も違うなら、単位の混在か分母の符号の入力ミスが疑われます。

例1:静止した聞き手に音源が近づく

クラクションの発振周波数は fs=680 Hzf_s=680\ \mathrm{Hz} です。車は静止した聞き手に vs=34 m/sv_s=34\ \mathrm{m/s} で近づきます。音速は v=340 m/sv=340\ \mathrm{m/s} とします。聞き手は静止しているので vo=0v_o=0 です。音源は近づくため、分母で音源の速さを引きます。

fo=680340340−34=680340306=755.6 Hz.f_o=680\frac{340}{340-34} =680\frac{340}{306} =755.6\ \mathrm{Hz}.

発振周波数より約 75.6 Hz75.6\ \mathrm{Hz} 高い値です。倍率を確認すると、340/306=1.111…340/306=1.111\ldots は1より大きく、近づく音源の結果として妥当です。速さの単位は約分され、ヘルツが残ります。この結果は単純で一定の運動を仮定した瞬間的な理想振動数であり、音量を予測するものではありません。

では同じ車が通り過ぎ、同じ速さで遠ざかる場合はどうでしょうか。変わるのは分母の符号だけです。

fo=680340340+34=618.2 Hz.f_o=680\frac{340}{340+34} =618.2\ \mathrm{Hz}.

接近時と遠ざかるときの周波数は、680 Hz680\ \mathrm{Hz} から上下に同じ幅だけ離れているわけではありません。分母は 306306 と 374374 で、逆数の変化が対称ではないからです。接近時に上がった分を発振周波数から引いて、遠ざかるときの音を推測しないでください。

波長の説明も数値で確認できます。山を1つ出してから次の山を出すまでの時間は 1/680 s1/680\ \mathrm{s} です。その間、音源は 34/680=0.050 m34/680=0.050\ \mathrm{m} 進み、波面は空気中を 340/680=0.500 m340/680=0.500\ \mathrm{m} 進みます。動く音源の前方では、連続する山の間隔は 0.500−0.050=0.450 m0.500-0.050=0.450\ \mathrm{m} です。静止した聞き手には 340/0.450=755.6 Hz340/0.450=755.6\ \mathrm{Hz} で届きます。別の方法でも同じ答えになりました。

例2:代わりに聞き手を動かす

クラクションを空気に対して静止させ、引き続き 680 Hz680\ \mathrm{Hz} で鳴らします。今度は聞き手が vo=34 m/sv_o=34\ \mathrm{m/s} で近づきます。空気中の波長は v/fs=340/680=0.500 mv/f_s=340/680=0.500\ \mathrm{m} のままです。聞き手は相対的な速さ 340+34=374 m/s340+34=374\ \mathrm{m/s} で波の山に出会います。

fo=680340+34340=748.0 Hz.f_o=680\frac{340+34}{340} =748.0\ \mathrm{Hz}.

748.0 Hz748.0\ \mathrm{Hz} を例1の 755.6 Hz755.6\ \mathrm{Hz} と比べてください。どちらも 680 Hz680\ \mathrm{Hz} より高いものの、この速さでは音源が動くほうが変化は少し大きくなります。両者を単なる1つの「相対速度」に置き換えると、媒質中の音に特有のこの差を見落とします。音源は波長を変え、聞き手は波を横切る頻度を変えます。

聞き手が逆に遠ざかるなら、分子に v−vov-v_o を使います。680(340−34)/340=612.0 Hz680(340-34)/340=612.0\ \mathrm{Hz} です。音源が遠ざかる場合の 618.2 Hz618.2\ \mathrm{Hz} よりも低くなります。同じ速さでの比較は、通過前と通過後の両方に使えます。

fs=680 Hzf_s=680\ \mathrm{Hz}、移動速度 34 m/s34\ \mathrm{m/s} の条件近づく遠ざかる
音源が動き、聞き手は静止755.6 Hz755.6\ \mathrm{Hz}618.2 Hz618.2\ \mathrm{Hz}
聞き手が動き、音源は静止748.0 Hz748.0\ \mathrm{Hz}612.0 Hz612.0\ \mathrm{Hz}

この表は、このガイド独自の計算による確認表です。各列で発振周波数、音速、動く物体の速さをそろえているため、変わるのはどちらの物体が動くかだけです。ドップラー効果を計算したあとのセルフチェックにも使えます。

例3:音源と聞き手の両方が近づく

同じ 680 Hz680\ \mathrm{Hz} のクラクションと、340 m/s340\ \mathrm{m/s} の音速を使います。今度は音源が聞き手へ 20 m/s20\ \mathrm{m/s}、聞き手が音源へ 10 m/s10\ \mathrm{m/s} で近づきます。どちらの動きも観測される振動数を上げます。聞き手の速さを分子に足し、音源の速さを分母から引きます。

fo=680340+10340−20=680350320=743.75 Hz.f_o=680\frac{340+10}{340-20} =680\frac{350}{320} =743.75\ \mathrm{Hz}.

倍率 350/320=1.09375350/320=1.09375 は1より大きい値です。別の確認として、聞き手の動きを取り除くと 680(340/320)=722.5 Hz680(340/320)=722.5\ \mathrm{Hz} です。聞き手も近づけると 743.75 Hz743.75\ \mathrm{Hz} に上がり、図の予測と一致します。音源が近づいたまま、聞き手だけが 10 m/s10\ \mathrm{m/s} で遠ざかるなら、2つの効果は競合し、680(330/320)=701.25 Hz680(330/320)=701.25\ \mathrm{Hz} となります。状況全体を単に「接近」と呼ぶのではなく、2つの符号を別々に選ぶ必要があります。

結果を正しく解釈するための条件

以上は古典的な音の例です。速さは特定の媒質、この場合は静止した空気に対する値であり、直線上の公式では音の伝わる方向に沿った動きを使います。風があれば空気に対する速度が変わり、横方向に動くなら速度成分が必要です。音源の速さは音速未満とします。近づく音源の速さが vs=vv_s=v に近づくと、分母はゼロへ近づきます。これは、この式で使った、波面が離れて進むというモデルが成り立たなくなる合図です。聞き手が無限大の周波数を聞くという意味ではありません。ソニックブームや衝撃波には別のモデルが必要です。

光にもドップラー効果はありますが、光は空気のような媒質なしで真空中を進みます。この音の式に光速を入れ、架空の静止した空気に対して音源と聞き手の速さを別々に扱ってはいけません。OpenStaxの光に関する章では、相対運動を使う相対論的な式を説明しています。近づくと振動数が上がるという物理的な考え方は共通ですが、計算方法は異なります。

新しい音の問題では、まず fsf_s、vv、vsv_s、vov_o を単位とともに書き、動きを図にしてから符号表を使いましょう。接近か遠ざかるか、および速さがゼロの極限で答えを確認します。動く物体の向きを整理しにくい場合は、運動学のガイドで速度の符号をそろえる方法を確認できます。Physics Zenの波動と音のトピックでは、数値が変わるドップラー効果の問題を解き、すぐに採点と詳しい解説を確認できます。符号の並びを丸暗記するより、明確な図を1つ描いて2つの確認をするほうが役立ちます。

よくある質問

ドップラー効果の公式では、どの符号を使いますか?
音の場合、音の伝わる方向に沿って、聞き手と音源が相手に近づくか遠ざかるかをそれぞれ判断します。聞き手が音源に近づけば分子に聞き手の速さを足し、音源が聞き手に近づけば分母から音源の速さを引きます。遠ざかる場合は符号を逆にします。
同じ速さで動くなら、音源と聞き手のどちらが動いても周波数の変化は同じですか?
静止した空気中の音では、厳密には異なります。発振周波数680 Hz、移動速度34 m/s、音速340 m/sなら、近づく音源では約755.6 Hz、近づく聞き手では748.0 Hzです。音源の移動は空気中の波長を変え、聞き手の移動は波面に出会う速さを変えます。
このドップラー効果の公式を光にも使えますか?
使えません。ここでの式は媒質中を伝わる音を扱い、音源と聞き手の速さはその媒質に対して測ります。真空中の光には相対論的なドップラー効果の式が必要です。光には静止した空気のような媒質はありません。
音源の速さが音速に達するとどうなりますか?
この単純な式では、近づく音源の分母がゼロに近づきます。これは音速未満で波面が一定の間隔で離れているというモデルが成り立たなくなる合図であり、聞こえる周波数が無限大になるという予測ではありません。衝撃波には別の扱いが必要です。

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