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物理の概念

音の強さと距離:逆二乗則の計算例題

2026年11月4日読了まで2分
音の強さと距離:逆二乗則の計算例題

開けた場所で小さな音源から二倍遠ざかったとします。音の強さは半分になるでしょうか。最も単純な物理モデルでは四分の一になります。音源のパワーが消えたわけではありません。四倍の面積をもつ球面全体に広がったのです。距離が四倍になれば球面の面積は十六倍になり、面積一平方メートルあたりに届く強さは元の十六分の一です。

これが音の強さに対する逆二乗則です。扱うのは単位面積あたりのエネルギーの流れであって、人が音を四分の一の大きさに感じるという約束ではありません。このガイドでは式を導き、数値例を解き、強さの比をデシベル差へ換算し、部屋の反射や大きな音源が単純なモデルを崩す条件も示します。ドップラー効果のガイドは別の変化、音源と聞き手の相対運動による周波数の変化を扱います。

まず音の強さが測るものを確認する

音波はエネルギーを運びます。パワーPPは一秒あたりに伝わるエネルギーで、単位はワットです。強さIIは、エネルギーの進む向きに垂直な単位面積を通過するパワーで、単位はワット毎平方メートルです。

I=PA.I=\frac{P}{A}.

この定義は聴覚だけのものではありません。OpenStax『University Physics』第1巻§17.3はこれを音に適用し、理想的な球面モデルへ進みます。計算前に単位を見ましょう。ワットを平方メートルで割ればW/m2\mathrm{W/m^2}です。ワットだけの答えはパワーであり、強さではありません。

スピーカーが同じ音響パワーを出し続けていても、遠くで測る強さは変わります。パワーが通過する面積が距離とともに増えるからです。距離や測定面を指定せず「このスピーカーの音の強さは」と問うだけでは条件不足です。異なる距離で測った二つの値を、音源自体が変わったかのように比較してもいけません。

球面の面積に二乗が現れる

小さな音源が全方向に等しく放射すると考えます。調べる距離では障害物や反射がなく、媒質へのパワー損失も無視できるとします。半径rrで、同じパワーが面積

A=4πr2.A=4\pi r^2.

の球面を外向きに通過します。この面積を強さの定義に代入すると、

I(r)=P4πr2.I(r)=\frac{P}{4\pi r^2}.

半径を二乗するのは、球の表面積が半径の二乗に比例するからです。音が三次元空間を進むからといって、半径の三乗で割るわけではありません。割る相手は球の内部体積ではなく表面積です。半径が二倍なら4π(2r)2=4(4πr2)4\pi(2r)^2=4(4\pi r^2)。同じパワーが四倍の面積に広がるので、一平方メートルには四分の一しか届きません。

式が役立つのは仮定が合う場合だけです。指向性スピーカーはどの方向にも同じ量を放射しません。壁はエネルギーの一部を反射します。音源の大きさが距離と同程度なら点にも見なせません。球面計算を理想モデルとして使い、あらゆるマイクの読みを予測する万能式と考えないでください。

計算機の前に距離の比を使う

音源のパワーが変わらなければ、二つの球面式を割り算できます。PPと4π4\piが消え、

I2I1=(r1r2)2.\frac{I_2}{I_1}=\left(\frac{r_1}{r_2}\right)^2.

理想モデルで2.0 m2.0\ \mathrm mの位置の強さが0.0080 W/m20.0080\ \mathrm{W/m^2}だとします。4.0 m4.0\ \mathrm mでは比は(2.0/4.0)2=1/4(2.0/4.0)^2=1/4なので、強さは0.0020 W/m20.0020\ \mathrm{W/m^2}。6.0 m6.0\ \mathrm mでは(2.0/6.0)2=1/9(2.0/6.0)^2=1/9で、約0.00089 W/m20.00089\ \mathrm{W/m^2}です。

使うのは音源から各位置までの距離の比です。追加で歩いたメートル数を二乗しないでください。2 mから4 mへの移動は距離が二倍、4 mから6 mへの移動は1.5倍です。両者の強さの比が同じにはなりません。「二倍遠ければ強さは半分」という線形の答えは魅力的ですが、増える面積を見落としています。

音源からの距離2 mを基準とした因子2 mで0.0080 W/m²の場合の理想的な強さ
2 m10.0080 W/m²
4 m(2/4)2=1/4(2/4)^2=1/40.0020 W/m²
6 m(2/6)2=1/9(2/6)^2=1/9約0.00089 W/m²

パワーと面積から強さを求める

今度は強さが与えられていない例です。仮想的な点音源が、音響パワーP=4π×10−4 WP=4\pi\times10^{-4}\ \mathrm Wを全方向に等しく出すとします。r=1.0 mr=1.0\ \mathrm mで球面の面積は4π m24\pi\ \mathrm{m^2}です。したがって、

I1=4π×10−4 W4π m2=1.0×10−4 W/m2.I_1=\frac{4\pi\times10^{-4}\ \mathrm W}{4\pi\ \mathrm{m^2}} =1.0\times10^{-4}\ \mathrm{W/m^2}.

2 mでは面積が16π m216\pi\ \mathrm{m^2}、強さが2.5×10−5 W/m22.5\times10^{-5}\ \mathrm{W/m^2}。4 mでは64π m264\pi\ \mathrm{m^2}と6.25×10−6 W/m26.25\times10^{-6}\ \mathrm{W/m^2}です。分子のパワーは一度も変わりません。このモデルで局所的な強さが低下する原因は幾何学的な広がりであり、音源の出力を下げたことではありません。

半径rr球面積4πr24\pi r^2強さP/AP/A1 mとの比
1.0 m4π m24\pi\ \mathrm{m^2}1.0×10−4 W/m21.0\times10^{-4}\ \mathrm{W/m^2}1
2.0 m16π m216\pi\ \mathrm{m^2}2.5×10−5 W/m22.5\times10^{-5}\ \mathrm{W/m^2}1/4
4.0 m64π m264\pi\ \mathrm{m^2}6.25×10−6 W/m26.25\times10^{-6}\ \mathrm{W/m^2}1/16

この数値は計算を示すための仮定で、実在するスピーカー、測定室、安全な曝露時間を表しません。幾何学的な確認に使ってください。半径を2 mから4 mへ二倍にすれば、強さはもう一度四分の一になります。面積が二倍にしかなっていなければ、二乗を落としています。

強さの比をデシベルに換算する

音の強さのレベルには対数目盛りを使います。強さIIと基準強さI0I_0について、OpenStaxは

β=10log⁡10(II0) dB.\beta=10\log_{10}\left(\frac{I}{I_0}\right)\ \mathrm{dB}.

と表します。通常の基準I0=10−12 W/m2I_0=10^{-12}\ \mathrm{W/m^2}を使うと、例の1 mでのレベルは10log⁡10(10−4/10−12)=80 dB10\log_{10}(10^{-4}/10^{-12})=80\ \mathrm{dB}です。2 mで10log⁡10(2.5×107)≈74 dB10\log_{10}(2.5\times10^7)\approx74\ \mathrm{dB}、4 mで約68 dB68\ \mathrm{dB}。この理想条件では距離が二倍になるたびに約6 dB低下します。

絶対値を二つ計算しなくても差は求められます。

Δβ=10log⁡10(I2I1)=10log⁡10(1/4)≈−6.02 dB.\Delta\beta=10\log_{10}\left(\frac{I_2}{I_1}\right) =10\log_{10}(1/4)\approx-6.02\ \mathrm{dB}.

強さが四分の一になったからといって、80 dBの四分の一を引いたり、20 dBになったと言ったりしてはいけません。デシベルは比の対数なので、強さの掛け算がレベルの足し引きになります。また、レベルは物理量ですが、感じる音の大きさは周波数、聴力、状況に左右されます。この例から「四分の一の大きさに聞こえる」とは言えません。OpenStaxも強さ、強さのレベル、主観的な大きさを分けています。

単純な法則が止まる場所

逆二乗モデルには、点に近い音源と自由音場が必要です。部屋の中では、音が壁、天井、床に反射して戻ってきます。聞き手に届く全体のレベルは、距離が二倍になるたびに6 dB下がるとは限りません。Auditory Neuroscienceの説明は反射による制約を明記しています。屋外でも障害物、地面、音源の指向性、吸収が結果を変えます。幾何学が間違いなのではなく、現実の状況が単純な仮定に合わなくなるのです。

大きなスピーカーや広がった音源の近くでは、「小さな点が全方向に放射する」図も不適切なことがあります。距離が音源の大きさと同程度なら、確認せずに球面式を使わないでください。問題文の「等方的な点音源」「球面波」「吸収は無視する」は式を使える条件です。そうした条件がなければ、自分の仮定を明記します。

騒音計やスマートフォンのアプリにdB値が表示されても、その値だけでは音源の音響パワーも逆二乗則も確かめられません。測定配置と校正が必要です。ここでの計算は与えられたパワーと距離から理想的な強さを予測します。スマートフォン表示だけで聴覚の安全性を判定する方法ではありません。

モデルを試す短い二題

**問題1。**理想的な自由音場で、点音源による強さが3 mで0.0036 W/m20.0036\ \mathrm{W/m^2}です。9 mではいくつでしょうか。距離は三倍なので強さは九分の一、0.0036/9=0.00040 W/m20.0036/9=0.00040\ \mathrm{W/m^2}です。レベル差は10log⁡10(1/9)≈−9.54 dB10\log_{10}(1/9)\approx-9.54\ \mathrm{dB}。差だけなら基準強さは不要です。

問題2。反射のある小部屋で二人が音源から1 mと2 mにいます。全体の音が6 dB違うと約束できますか。できません。理想モデルなら直接届く球面成分について約6 dBを計算できますが、反射音が両地点の総音量を変えます。解答がどの成分を表すのかを書くことも解法の一部です。

別の音の問題では、定常波が弦や管で許される周波数を決め、ドップラー効果は見かけの周波数変化を扱います。強さが問うのは別です。ここで一平方メートルを通るパワーはいくらか。量とモデルの仮定を名指しすれば、二乗にも対数にも役割が見えます。