比熱容量の計算例:Q = mcΔTで加熱・冷却・混合を解く

同じ量のエネルギーを受け取っても、二つのカップの温度上昇は違うことがあります。少量の水は大量の水より温まりやすく、同じ質量の銅と水でも反応が異なります。この違いのうち、物質に由来する部分が比熱容量です。式 は短いですが、熱と温度を混同したり、1 kgあたりの値に質量をグラムで代入したり、冷却で温度変化が負になることを忘れたりすると答えを誤ります。
ここでは加熱、未知の質量、終温、冷却、断熱された混合の例を順に解きます。単位の誤りをまとめた表とエネルギー収支の確認を使い、方法をほかの問題にも応用できるようにします。水・銅・アルミニウムの値はOpenStaxの比熱表に基づきます。教科書の計算に用いる代表値であり、あらゆる温度で厳密に一定の値ではありません。
熱、温度、熱容量は別の量
温度は物質の熱的な状態を表します。熱移動 は温度差によって境界を越えて移るエネルギーで、ジュールで測ります。高温の物体が、貯蔵された物質として「熱を含む」わけではありません。物体には内部エネルギーがあり、熱によってエネルギーが出入りします。この区別に役立つ広い意味でのエネルギー収支は、仕事とエネルギーのガイドで紹介しています。
比熱容量 は物質とその相に固有の量です。SI単位では1 kg、1 Kあたりのエネルギーを表し、単位は です。初歩的な問題では液体の水を 、銅を 、アルミニウムを とすることがあります。同じ相のまま温度が1 K上がるとき、1 kgがどれだけのエネルギーを必要とするかを示す値です。 自体も温度で変わり得るため、以下の計算では指定された範囲でほぼ一定と仮定します。
特定の物体の熱容量は で、単位は です。同じ物質の質量を2倍にすると も2倍になりますが、 は変わりません。質量 の水なら です。このモデルでは1 K温めるのに約 必要です。 と を区別すれば、異なる物体を混ぜる問題でよくある誤りを防げます。
単位をそろえてQ = mcΔTを読む
温度変化は終温から初温を引いて書きます。
ここで は質量、 はその物体に入ったエネルギーです。加熱で が正なら も正です。冷却で が負なら も負です。この式は物質が同じ相にあり、 を一定とみなせる範囲の温度変化を表します。
が なら、質量はkg、温度差はKにそろえます。摂氏の温度差は数値が同じです。 から への変化は です。温度差に273.15を足してはいけません。摂氏の温度差と を組み合わせることもできますが、1 kgあたりの比熱容量にグラムの質量をそのまま代入してはいけません。
| 問題で与えられた値 | 式に使う値 | 省くとどうなるか |
|---|---|---|
| 水 | 答えが 倍大きくなる原因は、 を と組み合わせること | |
| を温度変化と誤認し、加熱量を過大にする | ||
| 負号を落とすと物体からエネルギーが出ることを見失う | ||
| kJとJ単位の を混ぜると1000倍の誤差になる |
数値を代入する前に、この表で量と単位を確認してください。各行は問題の物理的な読み取りと、式が実際に受け取る数値を結びつけています。答えが不自然なら、物理モデルを変える前に換算を確認します。こうした誤りの一般的な形は、物理のミスに見えて実は数学のミスでも扱います。
例1:水を温めるエネルギー
液体の水 を から に温めます。 とします。水は液体のままで、容器や室内が受け取るエネルギーは無視します。温度変化は 。したがって、
掛け算を初めから繰り返さずに確認できます。この試料の熱容量は なので、 の上昇に必要なエネルギーは です。単位も と合います。正の符号は、水にエネルギーが入ることと一致します。
ヒーターがこれ以上のエネルギーを供給していても、差は容器や周囲の空気へ移った可能性があります。 で求めたのは水が受け取ったエネルギーであり、コンセントから取り出した電気エネルギーとは限りません。
例2:質量や温度変化を求める
が液体の水に入り、温度が 上がったとします。数値を入れる前に式を変形します。
これは です。元の式に戻すと 。もし答えが なら、まずgからkgへの換算ミスを疑います。
別の未知量として、アルミニウム に を与えます。 とすると、温度上昇は
初温が なら、終温は です。上昇量は 、初温と終温は摂氏で示されています。ケルビンと摂氏の刻み幅は同じで、零点だけが違うので、これらは矛盾しません。
例3:冷却と負のQ
銅片 が から に冷えます。、 とすると、
この負号は、「物体に入る」を正とした定義では銅からエネルギーが出たことを示します。銅が放出したエネルギーの大きさは です。銅が「負の熱を含む」とは言わないでください。断熱された条件で別の物体がこのエネルギーをすべて受け取れば、その物体の は正の です。開放系では一部が周囲へ移る場合があるため、追加情報なしに全量が一つの受け手に入ったとは言えません。
大きさも確認できます。銅片の熱容量は 。 の低下を掛けると で、物体から出るため負号を付けます。
例4:熱い銅と冷たい水を混ぜる
銅 (初温 )を、液体の水 (初温 )に入れます。容器は断熱され、容器自体の熱容量は無視でき、相変化もないとします。両者が共通の終温 に達します。銅が失ったエネルギーは水が得たエネルギーに等しいので、
熱容量は銅が 、水が です。整理すると、
答えは と の間で、試料の熱容量がはるかに大きい水の初温に近くなっています。 を超えたり を下回ったりする答えは、外部からのエネルギーがないという仮定に反します。
丸める前の値で収支を確認すると、銅は 、水は です。丸め誤差を除けば合計はゼロ。OpenStaxの熱量測定の章も同じく損失と獲得の収支を用います。実際の容器もエネルギーを吸収するので、より詳細な収支では容器の熱容量を含めます。
この式が適さない場合
式が想定するのは、一つの相の中での温度変化です。融解や沸騰の間は、温度がほぼ一定のままエネルギーが相を変えることがあります。 を に入れて、エネルギーが不要だったと結論するのはモデルの選択ミスです。多段階の問題は、温度変化の区間を 、相変化の区間を問題で与えられた適切な潜熱による に分けます。OpenStaxは相変化を別に扱っています。
比熱容量はすべての温度や状態で厳密に一定ではなく、外部に開いた系では移したエネルギーがすべて指定した試料に残るわけでもありません。初歩的な問題では通常、 の値と無視してよい損失が指定されます。式の横に仮定を書きましょう。実験や実際の装置では、教科書の一つの数値を無理に当てはめるのではなく、容器、環境、温度依存性を測定またはモデル化します。
新しい問題では、対象の物体、その質量をkgで、物質と相、単位付きの 、そして を書き出します。 がその物体へ入る向きか、そこから出る向きかを決めます。混合問題では各物体について符号付きの を一つずつ書き、断熱系として扱う場合に限って合計をゼロにします。Physics Zen の熱と温度のトピックでは、新しい数値と詳しい解答でこの立式を練習できます。単位とエネルギー収支の確認を後回しにせず、計算の一部にするのが目標です。
よくある質問
- 比熱容量とは何ですか?
- 比熱容量 c は、物質1 kgの温度を1 K変えるために移す必要があるエネルギーを表します。これは、その範囲で c を一定とみなせる場合の近似です。SI単位は J/(kg·K) です。一方、熱容量 C=mc は特定の試料についての値です。
- Q = mcΔTに摂氏温度を使えますか?
- 温度差には使えます。1 °Cの変化は1 Kの変化と同じ大きさなので、20 °Cから60 °Cなら ΔT=40 °C=40 K です。ただし、別の公式で摂氏の絶対値をそのままケルビンとして扱ってはいけません。
- 物体が冷えるとQは負になりますか?
- Qを物体に入るエネルギーと定義すれば、負になります。冷却では ΔT=Tfinal−Tinitial が負なので、Q=mcΔT も負です。その絶対値が、理想モデルで物体が放出するエネルギーです。
- Q = mcΔTで融解や沸騰も計算できますか?
- 一定の c を使う式一つだけでは相変化を扱えません。温度がほぼ一定でも、エネルギーは相を変えるために使われます。温度変化の区間は mcΔT、相変化の区間は問題で潜熱 L が与えられた場合に mL で分けて計算します。


