運動量を直感で理解する:衝突でも成り立つ保存則

駐車場で買い物カートと荷物を積んだ引っ越し用バンを、同じ歩く速さで押してから、それぞれ止めてみるとします。速さは同じでも、止める難しさはまるで違います。ニュートンの法則なら各瞬間に必要な力を計算でき、エネルギーなら止めるための仕事を求められます。しかし、感じている「取り除くべき運動の量」をそのまま表すのは別の量です。
物理ではそれを運動量と呼びます。運動量は力学のもう1つの重要な収支です。仕事とエネルギーの記事では、2つの時点の間でつり合いを取るスカラーの収支を紹介しました。運動量は同様の性質を持つベクトルの収支です。そしてエネルギーの収支にはない大きな利点があります。激しく、複雑で、エネルギーが散逸する衝突でもつり合うことです。つぶれる車、くっつく粘土、物体にめり込む弾丸では、エネルギーの収支が崩れても運動量の収支は崩れません。
これは運動学、ニュートンの法則、仕事とエネルギーに続く、力学シリーズの4本目の記事です。運動量が何を測るか、力積がなぜニュートンの第2法則を正確に表すか、衝突で合計が保存される理由、3種類の衝突の違い、そして問題に応じてどちらの収支を使うかを説明します。
運動量は物体が持つ運動の量
運動量は質量と速度の積です。
単位はキログラム・メートル毎秒です。運動量はベクトルであり、その性質が重要です。向きは物体の進行方向と同じで、反対向きの運動量は打ち消し合います。質量2 kgの球が右へ3 m/sで動くと運動量は 、左へ動くと です。そのような球が2つ向かい合えば、どちらも動いていても全運動量はゼロになります。
カートとバンの速さが同じなら、運動量の違いは質量だけで決まり、バンの運動量はカートの100倍です。止めるときに感じる違いは、まさにこの倍率です。運動量は「どれだけ運動しているか」を表し、質量と速度は同じ仕方で寄与します。どちらかを2倍にすれば運動量も2倍です。速さが2乗で効く運動エネルギーと比べると、両者を混同しやすい理由が見えてきます。
力積はニュートンによる第2法則の表し方
ニュートンは とは書きませんでした。力は「運動の量」の変化の割合だと述べました。現代の記号では次の式です。
両辺に時間を掛けると、力積と運動量の関係になります。
左辺の力と作用時間の積が力積で、単位はニュートン秒です。右辺はそれによる運動量の変化です。質量が一定なら、これは を変形した式です。なぜなら 、 だからです。ただし力積の形なら、加速度の形では見えにくいことがわかります。同じ運動の変化は、短時間の大きな力でも長時間の小さな力でも生み出せます。
この関係はあらゆる安全装置に使われます。15 m/sで走る車が停止するなら、何にぶつかっても全運動量を失わなければなりません。硬い壁では数百分の1秒で止まり、力が非常に大きくなります。衝撃吸収構造なら停止に数十分の1秒をかけ、その分だけ力が小さくなります。エアバッグは頭に対して同じ働きをします。クリケットの球を捕るときに手を引く、膝を曲げて着地する、体育館の床にクッションを敷く場合も同じです。 は変えられないので、 を延ばして を小さくします。
力と時間のグラフでは、曲線の下の面積が力積です。変化する力もこの方法で扱えます。衝突時の力が急に大きくなってから下がるなら、その山の面積が力積で、平均の力は面積を作用時間で割った値になります。
合計が保存される理由
2つの物体を衝突させます。接触中、物体AはBを押し、BもAを押し返します。ニュートンの第3法則から、これらの力は大きさが等しく向きが反対です。両者の接触は同時に始まり同時に終わるため、力が働く時間もまったく同じです。したがってAに働く力積はBに働く力積の負であり、Aの運動量の変化はBの変化の負です。
一方が失う運動量を、もう一方が1グラム・メートル毎秒の端数まで受け取ります。合計は変わりません。これが運動量保存則です。衝突の激しさ、跳ね返るかくっつくか、どれだけのエネルギーが熱や音になるかは条件に入っていません。内部の力は必ず対になって打ち消し合うため、系の内部で何が起きても、系の全運動量は変わりません。
合計を変えられるのは外力だけです。地面との摩擦力、重力、壁から受ける力などです。運動量の問題に「衝突の間」という表現がよく出るのはそのためです。接触が非常に短ければ、外力が意味のある力積を与える時間がなく、衝突直前と直後の全運動量は等しくなります。静止した花火の運動量はゼロで、爆発直後も全運動量はゼロです。破片はすべて動きますが、運動量は互いに打ち消し合うように分かれます。
3種類の衝突
どの場合も運動量は保存されます。違うのは運動エネルギーの行方であり、衝突問題で問われる本質はそこです。
完全非弾性衝突:くっつく。 動いていた貨車が静止した貨車につながる場合、弾丸が物体にめり込む場合、車2台が一体になる場合です。衝突後は2つの質量を合わせた1つの物体が同じ速度で動き、その速度は運動量保存則ですぐに求められます。
衝突後の運動エネルギーは必ず前より小さく、運動量を保存する中で失えるエネルギーが最大になるのがこの場合です。エネルギーはどこへ行ったのでしょうか。変形、熱、音になりました。エネルギーの記事で摩擦力が入れた の欄と同じです。問題で2つの物体がくっつくなら、運動量を使い、 とは書いてはいけません。成り立たないからです。
弾性衝突:失わずに跳ね返る。 ビリヤードの球、鋼の球、非常によい近似として気体分子が例です。運動量と運動エネルギーの両方が保存されます。2本の式が得られるため、衝突後の未知の速度2つを求められます。最も単純な特別例は、一次元で質量が等しい場合です。動いていた球は止まり、静止していた球が元の速さで進みます。ビリヤードでよく見る場面です。一般に正面からの弾性衝突では、接近するときの相対的な速さと離れるときの相対的な速さが等しく、二次方程式の計算を省く近道になります。
非弾性衝突だが、完全非弾性ではない:跳ね返り、一部を失う。 現実の衝突のほとんどがそうです。落とした高さまで戻らない球、車が分かれる衝突、テニスのサーブなどです。運動量は保存され、運動エネルギーは減少します。その減少量が問題で与えられるか、求める対象になります。運動量だけでは足りず、さらに1つ情報が必要です。
3つの場合を整理するなら、運動量保存の式は常に書きます。エネルギー保存の式を追加するのは弾性衝突と指定されたときだけで、物体がくっつくときには追加しません。
2つの計算例
台車が静止した台車に衝突して連結する。 質量3 kgの台車が4 m/sで進み、静止した1 kgの台車に衝突して一体になります。衝突前の運動量は です。衝突後、質量を合わせた4 kgの台車は で動きます。衝突前の運動エネルギーは 、後は です。6ジュールが熱や連結時の音になりました。運動量は完全につり合い、エネルギーは4分の1減っています。これが非弾性衝突を数値で見た姿です。
反動。 氷上で静止している質量60 kgのスケーターが、質量2 kgの球を前方へ15 m/sで投げます。投げる前の全運動量はゼロなので、その後のスケーターの運動量は球の運動量を打ち消します。 より で、毎秒0.5メートルの速さで後ろへ動きます。スケーターを外から押した人はいません。スケーターが球を押し、第3法則によって反動が起きたのです。ロケット、銃、消防ホースの反動も、数値が違うだけで同じ計算です。
運動量とエネルギー:どちらの収支を使うか
保存される2つの量は異なる問いに答えます。よくあるミスは、正しいほうではなく使い慣れたほうを選ぶことです。
運動量の収支を使う場合:
- 2つ以上の物体が相互作用し、直後の速度を求めたい。
- 問題に「くっつく」「連結する」「めり込む」「爆発する」「反動」「衝突する」とある。
- つぶれたりくっついたりして、運動エネルギーが明らかに保存されない。
- 時間と速度の変化から力を求める、またはその逆を求める。
エネルギーの収支を使う場合:
- 1つの物体が高さを変えて、または経路に沿って動き、別の場所での速さを求めたい。
- 弾性衝突と指定され、2本目の式が必要。
- 既知の距離にわたる摩擦だけが損失になる。
2つの収支を一緒に使うこともよくあります。弾道振り子が典型です。弾丸がつるした物体にめり込む段階では、くっつくので運動量を使います。次に一体になった物体が一定の高さまで上がる段階では、1つの物体が重力に逆らって上がるのでエネルギーを使います。逆の順序にしたり、めり込む段階でエネルギーを使ったりすると、答えが大きく違ってしまいます。重要なのは法則を知ることだけではなく、今解いている段階にどちらが適するか見極めることです。
ミスが生まれるところ
運動量をスカラーとして扱う。 正面衝突で速度の符号を落とすと、答えがまったく変わります。正の向きを選び、すべての速度に符号を付け、最後の答えの符号が物理的に妥当かを確かめましょう。
くっつく衝突で運動エネルギーを保存する。 物体が連結すると問題に書かれていれば、エネルギーは失われています。 と書くと矛盾するか、速度を間違えます。使うのは運動量だけです。
力積を力だけだと思い、時間を忘れる。 長時間続く小さな力のほうが、短い間だけ働く大きな力より大きな力積を与えることがあります。大切なのは力と時間のグラフの下の面積です。
外力が働く長い時間に運動量保存を適用する。 車が坂を上る間、重力と摩擦力が力積を与えるため、車の運動量は保存されません。保存則を使うのは短い相互作用、または正味の外力が働かない系です。
衝突後に動く質量を取り違える。 完全非弾性衝突では質量を合わせたものが動きます。弾性衝突では2つの質量は別々の物体のままで、異なる速度で動くことがあります。「くっつく」という条件を見落とさないでください。
運動量が役立つところ
運動学は運動を記述し、ニュートンの法則はその理由を説明し、仕事とエネルギーは経路を飛ばして考える方法を与えました。運動量なら、衝突の内部を飛ばせます。接触中の力、その作用時間、接触の形を知らなくても、入ってくる運動量がわかれば出ていく合計は同じ数です。激しい衝突でも残る収支です。
さらに次の分野につながります。角運動量は回る物体についての同じ考え方で、ジャイロスコープが立ち、フィギュアスケーターが腕を引き寄せると回転が速くなる理由に関わります。第2法則を力積と運動量で表す形は、 がそのままでは成り立たない相対性理論にも引き継がれます。そして第3法則から来るように見えた保存則は、もっと深い性質に基づきます。物理法則が、ここでも1メートル左でも同じだということです。物理の保存則の背後には対称性があり、運動量は最も単純な例です。
身につけるための流れは、物理を効果的に学ぶ方法で示したものと同じです。正の向きを決め、衝突前後の運動量を符号付きで書き、問題文からエネルギーも保存されるかを判断し、解いてから符号と極限を確認します。Physics Zenの運動量と衝突では最初の4スキルが無料で、最後の重心だけがPremium対象です。このトピックでは、力積と平均の力、一体になる衝突と反動、同じ質量から始める弾性衝突を新しい数値で練習できます。特定の計算例ではなく、2つの収支を使い分ける習慣を身につけられます。
よくある質問
- 運動量と運動エネルギーはどう違いますか?
- 運動量は質量と速度の積で、向きのあるベクトルです。どの衝突でも保存されます。運動エネルギーは質量と速さの2乗の積の半分で、向きのないスカラーです。保存されるのは弾性衝突の場合だけです。同じ台車2台が同じ速さで向かい合えば、全運動量はゼロでも運動エネルギーは残ります。そのため、衝突して一体になれば完全に止まることができます。
- 衝突で運動量が保存されるのはなぜですか?
- ニュートンの第3法則によります。衝突中、2つの物体は同じ時間、互いに大きさが等しく向きが反対の力を及ぼすため、力積も大きさが等しく向きが反対で、運動量の変化が打ち消し合います。一方が失った運動量を他方が得ます。摩擦力や重力などの外力は全運動量を変えられますが、短い衝突中には影響する時間がほとんどありません。
- 力積を簡単に言うと何ですか?
- 力積は力と、その力が働く時間の積で、生じた運動量の変化に等しくなります。短時間の大きな力と長時間の小さな力は、同じ力積を与えることがあります。エアバッグや衝撃吸収構造が役立つのはそのためです。車が失う運動量を変えるのではなく、止まるまでの時間を延ばして体に働く力を小さくします。
- 弾性衝突か非弾性衝突かはどう見分けますか?
- 衝突前後の運動エネルギーを比べます。同じなら弾性衝突、後で小さくなるなら非弾性衝突です。物体が一体になるなら完全非弾性衝突で、可能な中でエネルギーの減少が最大です。3つの場合すべてで運動量は保存されるため、違いはエネルギーにあります。
- 運動量は負になることがありますか?
- あります。運動量はベクトルで、符号は向きを示します。一次元では正の向きを決め、反対へ動く物体の運動量を負にします。大きさが等しく向きが反対の2つの運動量は足すとゼロです。静止した花火が爆発する前も直後も、全運動量がゼロである理由です。


